腰の痛み
腰痛は、人類が2本の足で起立し歩行する生活をするかぎり宿命的なものであり、ほとんどの人が腰痛を経験するといわれています。腰痛にもいろいろな現れかたがあり、その原因も様々です。腰痛を治すには、その原因を探り、適切な治療を受けることが大切です。
脊椎のしくみ
脊椎は、椎骨という小さな骨がいくつも積み上げられたもので、身体を支えるのに重要な柱の役割をしています。脊椎の首の部分には頸椎という7個の椎骨があります。胸の部分には胸椎という12個の椎骨があり、さらにその下の腰の部分には腰椎という5個の椎骨が積み重ねられています。またそれぞれの椎骨の間には椎間板という軟骨が挟まっており、これは衝撃を和らげるクッションの役目をもっています。また脊椎を横から見るとS字状に曲がっており、頸椎と腰椎は前彎、胸椎は後彎がみられます。この彎曲は脊椎にかかる負担を和らげ、バランスをとる働きをしています。
代表的な腰の疾患
ぎっくり腰
急性腰痛の1つで、ドイツ語では「魔女の一撃」と呼ばれています。腰をひねったときや急に重い物を持ち上げようとしたとき、またくしゃみをしたときなどに突然激しい腰痛に襲われ、身体を動かせなくなります。これは腰椎の関節の捻挫によるものと考えられていて、若い人にも起こりますが、とくに中高年の人に多くみられます。ぎっくり腰になったら、まず安静を保ち、かための布団やマットの上に楽な姿勢で寝ることが大切です。
変形性腰椎症
とくに中高年以上の人に多くみられ、腰に痛みやこわばりを感じます。原因は加齢によるものをはじめ、腰に負担のかかる労働で腰を使いすぎたことなどが考えられます。この病気では椎間板の組織の変性や腰椎の形状の変化(骨のとげ)がみられます。しかし、骨の形状が変化したからといって、必ずしも腰痛を起こすとはかぎりません。形状の変化した部分が周囲の神経や靱帯、関節、椎間板などに影響を及ぼして痛みを引き起こすといえます。長い間歩き続けたあとや急に違う動作をはじめたときなどに腰が痛むこともあります。
腰椎椎間板ヘルニア
とくに30歳代を中心とした青年と壮年に多くみられます。原因は椎間板(髄核)が後方へとび出して、脊椎の中に保護されている神経を圧迫するために起こります。主な症状は腰痛と足の痛みですが、この他にも足のしびれや、筋力の低下などの症状がみられます。またあお向けで足を伸ばしたまま持ち上げようとすると太ももの後ろに痛みが走ります。
腰痛症(慢性腰痛)
腰椎や骨盤の周辺に痛みが起こります。はっきりとした原因がわからない場合も多いのですが、同じ姿勢を長く続けていたため、あるいは不規則な生活や運動不足、悪い姿勢、精神的なストレスなどによって腰の筋肉が緊張しすぎて疲労し、痛みだすものと考えられています。
腰部脊柱管狭窄症
60歳代以後の男性に多くみられます。原因は脊柱管(神経を入れている管)が、老化、あるいは変形などにより狭くなって神経を圧迫するために起こります。この病気では腰から下半身にかけての痛みやしびれ、また一度に長く歩けないなどの症状がみられます。
脊椎分離およびすべり症
脊椎の後方(椎弓)が分離し、不安定になって腰痛を起こします。学童生徒のスポーツ選手や比較的若い人に多くみられ、成長期の過度の運動が原因と考えられています。すべり症は分離症がさらに進んで起きますが、分離を伴わずに起こることもあります。