高齢者に多い骨折

年をとると、若いときに比べて骨がもろくなり、尻もちをつく、転ぶといったささいなことが原因で骨折を起こす危険性が高まります。骨粗鬆症がある場合には特に骨が折れやすいので注意が必要です。また高齢者の場合、高血圧、心臓病、糖尿病などの様々な病気を合併していることが多いので、骨折部位のみに目をとられることなく全身状態の管理が必要になります。沢山の薬を飲んでいる場合には、薬の副作用で転倒しやすいこともありますので気をつけて下さい。また、転倒してもあまり痛がらないため、本人や家族の方が打撲や捻挫と思って骨折の発見が遅れる場合もありますので注意してください。いずれにしても歩けなければ救急車を呼んで早く専門医の診断・治療を受けるようにする必要があります。
高齢者、特に骨粗鬆症の人に多くみられる骨折には、つまずいて手をついたりして肩のつけ根(上腕骨近位端骨折)や手首(橈骨末端骨折)を骨折したり、尻もちをついたりして腰や背中が痛く動けなくなる脊椎圧迫骨折、横に転んで起きあがれなくなる大腿骨頸部骨折などがあります。

上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)

高齢者が歩行中に転倒したり、手をついたことで、肩のつけ根の上腕骨の上の部分(頚部)が折れることがよくあります。これは年をとるとともに骨がもろくなる為に折れやすくなるわけです。特に50代以上の女性に多く起こりやすい骨折です。
折れ方にはいろんなタイプがあります。ずれ(転位)が少ない簡単な折れ方の場合には、三角巾固定や包帯固定、あるいはハンギングキャストという、手を吊り下げるギプス固定をすることで骨折は治ります。折れ方がひどく、転位が大きいときには手術をして治すこともあります。手術ではプレートでとめたり、釘でとめたりすることもありますし、人工骨頭に変える場合もあります。

大腿骨近位端骨折(だいたいこつきんいたんこっせつ)

人間の体の中で一番長い骨は、ふとももの部分にある大腿骨です。大腿骨は腰のつけ根で骨盤とつながる股関節を作ります。大腿骨の上の丸い部分を骨頭といい、そのすぐ下を頚部といいます。頚部の下には、骨の外側と内側に出っ張りのある転子部があります。高齢者は転倒などによりこの頚部と転子部が簡単に折れることがあります。これを「大腿骨近位端骨折」といいます。高齢者で、転んで股関節が痛くて歩けない場合には、まずこの骨折が考えられます。大腿骨近位端骨折は特に女性に多く、骨粗鬆症などで骨がもろい状態で起こりやすくなります。
骨折した直後から脚の付け根の痛みと腫れがあり、歩くことができなくなります。骨折の程度によっては、骨折直後に痛みが無く、立ち上がったり歩くことができてしまう場合があります。また脚の付け根ではなく膝に痛みを訴えることもあります。認知症のある方の場合にはしばらく気づかないこともあるので注意が必要です。

脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)

必要以上に強い力が背骨(脊椎)に加わったとき、その圧力で骨がつぶれるような形で骨折することをいいます。高齢者で骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の方の場合、転んだり、尻もちをついたりして腰や背中が痛くなり動けなくなる場合には、圧迫骨折を起こしていることがよくあります。また、重いものを持ち上げたり、咳をしたときに簡単に骨折したり、本人が全く知らないうちに徐々に骨がつぶれる場合もあります。
圧迫骨折は、骨が健康な成人にとってはまれな病気で、高い所から転落したなど、大きな力が加わった場合におこります。こうした事故の場合、脊椎の圧迫骨折だけでなく、他の部位の骨折や臓器の損傷をともなうこともあります。
もっとも多くみられるのは、骨粗鬆症が原因でおこるものです。人間の骨は20歳から30歳ごろに骨の量は最高値を示しますが、その後骨の老化が始まり骨の量は低下し始めます。骨の老化により最大骨量の70%未満に骨量が減ってしまった状態を骨粗鬆症と呼びます。骨粗鬆症になると、比較的軽い力が加わっただけで、あるいは、ほとんど力が加わらなくても、自然に脊椎の圧迫骨折がおこることがあります。

橈骨末端骨折(とうこつまったんこっせつ)

つまずいて転んで手をついた時によくおこる骨折で、子供にもみられますが、骨のもろくなった高齢者には多く発生します。手首より2~3センチ肘よりの親指側の太い骨(橈骨)が折れ、腫れや痛みがおこります。また、この骨折では末梢の骨片が手の甲の方へずれることが多く、その結果、横から見るとまっすぐではなくフォ-ク状に曲がって見える変形(フォ-ク状変形)がみられます