スポーツによるケガ(外傷、障害)

スポーツによって起こる傷害(スポーツ傷害)は、急激な大きな力が骨や関節、筋肉や靭帯に働いて骨折・脱臼・断裂を生じる「スポーツ外傷」と動作の繰り返しによって骨・筋肉および靭帯を損傷する「スポーツ障害」に分けられます。

代表的なスポーツ外傷

足関節捻挫

捻挫(ねんざ)とは関節のケガで、正常に動く範囲を超える外力が関節に加わり、関節を構成する骨と骨をつなぐ靱帯(じんたい)や、関節包(かんせつほう)と呼ばれる関節を包む膜に傷がついた状態をいいます。中でも、足首を内側にひねって起こる、内反捻挫(ないはんねんざ)は起こりやすいケガです。足関節捻挫は、バスケットボ-ルや、バレ-ボ-ルなどで着地に失敗したときや、サッカ-のプレ-中に足首を捻ったときなどに起こります。普段の生活でも、段差で躓いたときや、転倒したなどに起こります。

足関節捻挫は、損傷の程度で3段階に分類することがあります。

※関節を捻った際、ひどい時は骨折をしている場合もありますので、整形外科医を受診し、レントゲン撮影などの検査をしっかりと受けるようにしてください。

I度(軽症)
靭帯の繊維の一部が切れた場合で、痛みは軽く、関節はグラグラしません。
II度(中等症)
靭帯のかなりの部分が切れてしまっています。痛みがあり腫れてきて、内出血も強く、関節がグラグラして不安定になります。
III度(重症)
靭帯が完全に切れてしまっています。痛みがとても強く、腫れてきます。関節はグラグラして不安定になります。

突き指

よくあるのはボールを受けそこねて指をそらせてしまったり、逆に折りたたむような衝撃を受けた場合です。他にも、手を振っていて机や柱にぶつけてしまい、突き指をしてしまうこともあります。 一般に、突き指はそのまま安静にしていれば痛みも治まり、とくに心配するような障害は残しません。しかし、単なる突き指と思っていても、実は腱が切れていたり、骨折している場合もあるため、必ずしも安心というわけではありません。つまり、突き指とは指の関節が傷んだ状態をいい、診断名ではありません。実際は「腱断裂」「骨折」「脱臼」「靭帯損傷」「捻挫」などが正確な診断名となります。

肉離れ

肉離れは、筋肉の線維や筋肉を包む膜(筋膜)の一部が断裂する状態のことです。短距離走中やスタ-トダッシュで、太ももの裏側にがくんとする感じで激痛が走ったり、テニスで前に出ようとしてふくらはぎに激痛が発生したりしたときなどに起こります。つまり、何かにぶつかったりして起こるのではなく、自分で筋肉を急激に収縮した(力を入れた)ときに起こります。ケガをしたところを押すと痛みがあり、足に力を入れたり、無理に伸ばしたりすると痛みが強くなります。

膝の靭帯損傷

膝関節には、立ったり、座ったり、歩いたり、走ったり、あらゆる動作中に関節が前や後ろ、右や左にぐらぐら揺れないように支える役割をする4つの靱帯(前十字靭帯・後十字靭帯、内側側副靭帯・外側側副靭帯)があります。膝の靱帯損傷は、これらの靱帯が傷ついたり、のびてしまったり、切れてしまった状態をいいます。
バスケットボールやバレーボールでジャンプした状態から着地した時に膝を捻ったときによく傷めます。また、サッカ-やラグビー、フットボールなど接触プレーの多い競技では、タックルを受けたときに傷める事があります。
靭帯を傷めた直後はかなり強い痛みと腫れが生じます。応急処置としてRICEを行い、すぐに整形外科を受診し、適切な治療を受けて下さい。

代表的なスポーツ障害

疲労骨折

疲労骨折とは、一回の大きな外力により起こる外傷性の骨折とは異なり、骨の同じ部位に小さな外力が繰返し加わることによって、骨の組織の連続性が断たれ、不完全あるいは完全な骨析にいたった状態をいいます。これは金属を繰り返し曲げ伸ばしすると、ついには折れてしまう現象とよく似ています。疲労骨折は他に、ストレス骨折、過労性骨障害とも呼ばれ、特に10~20歳代の青少年に多くみられます。
スポーツを原因とした疲労骨折は、下肢の骨に圧倒的に多くみられ、その中でも脛骨(下腿の内側の骨)が約50%を占めます。それに続いて腓骨(下腿の外側の骨)、中足骨(足の甲の骨)そして大腿骨(太ももの骨)によくみられます。ときに体幹、脊椎、上肢にもみられます。疲労骨折は、筋力が不十分な発育期に、スポーツを急激に行ったり、身体状況を考えないで、強度なトレーニングをすることが原因で発生します。

テニス肘

テニス肘は、テニスを中心とした、ラケットを使用するスポ-ツを行っている人にみられる肘関節周囲の痛みを生じる障害をいいます。テニス肘には、肘の外側(親指側)の筋肉(手関節伸筋)に痛みが起こる「外側テニス肘」と肘の小指側周囲から手を手のひら側に曲げる筋肉(手関節屈筋)に痛みが起こる「内側テニス肘」があります。テニス肘の多くは「外側テニス肘」で、「内側テニス肘」は上級者やプロ選手にみられることが多い障害です。
テニス肘は、肘関節周囲の手関節を曲げる筋や腱に繰り返しストレスが加わることによって、その部分の微細な断裂や炎症が生じて起こると考えられています。テニス肘の発生には、練習習慣や年齢、筋力、柔軟性、技術、ラケットが影響してきます。

野球肘

野球肘とは投球による肘の障害の総称のことです。主に、投げすぎによって起こるスポーツ障害で、肘の内側に痛みがでる事が多いです。原因として投球動作のリリース直前に肘の内側に張力(引っ張る力)、肘の外側には圧迫力(上腕骨と橈骨がぶつかる)が働くことがあげられます。症状は、痛みがあり、肘の動きが悪くなります。我慢したまま投げ続けると剥離骨折や靭帯損傷へつながる恐れがあります。

野球肩

野野球肩とは、投げる動作の時に、肩の痛みがあるため思うようにボールを投げられない状態を総称した診断名です。主に投球動作の繰り返し(使い過ぎ)が原因で、肩の筋肉や靭帯などの組織に炎症、小さな外傷、摩耗が生じて起こります。そこには、さまざまな病態が含まれています。例えば、筋肉や腱の炎症、肩の周りの筋肉(腱板)や軟骨の損傷、引っ掛かりなどが痛みや雑音の原因になります。しかし、野球肩になるとこれらの病変が単独で存在することは少なく、いくつかの病変が混在して肩の障害を引き起こしていることが多く見られます。また、ある1つの病変が存在することで2次的にほかの病変が引き起こされることもあります。また、野球以外でも水泳やテニス、バレーボールなどでも肩を傷めることがあります。

ケガに対する応急処置

スポ-ツ中に打撲や捻挫などを起こした場合には、RICCE(ライス)と呼ばれる方法を行います。
RICEとは以下に述べます4つの英語の頭文字をとったものです。

R(Rest:レスト、安静)
無理に動かすとケガを悪化させます。ケガをしたところを安静に保つようにしてください。
I(Ice:アイス、冷却)
冷やすのは炎症を抑えるためです。ケガをしたところに直接氷を当てると凍傷を生じる危険性があります。ビニ-ルの袋に氷を入れ、タオルでくるんでケガをしたところに当てるのが効果的です。
C(Compression:コンプレッション、圧迫)
圧迫するのは、出血と腫れを防ぐためです。弾力性のある包帯でケガをしたところを巻いてください。
E(Elevation:エレベ-ション、挙上)
ケガをしたところを挙上しておくことによって、腫れや出血を防ぎます。

以上のことがケガの応急処置ですが、あくまでも応急処置なので、ケガをしたところを動かさないようにして、すぐに病院で受診することをお勧めします。