日本整形外科学会専門医 武部 健
「骨粗鬆症の薬、ずっと飲み続けなきゃいけないの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?実は、骨粗鬆症の治療は“継続”が何よりも大切です。今回は「服薬継続率」に注目し、なぜ続けることが重要なのかをわかりやすくご紹介します。
【1年以内に半数が脱落?】
骨粗鬆症の治療を始めた人のうち、1年後まできちんと続けている人は約53%。3年後も続けている人は23%まで減ってしまいます(Weycker D, Osteoporos Int. 2006)。
つまり、半数以上の人が1年以内に治療をやめてしまっているのです。
骨粗鬆症は「いつの間にか骨折」と呼ばれるほど、症状が出にくい病気。痛みがないからといって薬をやめてしまうと、知らないうちに骨がもろくなり、転倒などで骨折するリスクが高まります。
【服薬アドヒアランスとは?】
「服薬アドヒアランス」とは、患者さんが病気を理解し、医師の指示通りに薬をきちんと飲むことです。急性の病気(風邪など)に比べて、慢性疾患ではこのアドヒアランスが低くなりがちです。
骨粗鬆症は無症状のまま進行するため、「飲まなくても大丈夫」と思ってしまう方が多いのですが、薬を続けることで骨折を防ぐ効果がしっかり出ることがわかっています。
【薬を続けるほど、骨折を防げる】
治療の継続率と骨折の発生率には明確な関係があります。
MPR(Medication Possession Ratio)という指標で、薬をどれだけきちんと飲んでいるかを測ることができます。
MPRが50%以下、つまり薬を半分しか飲んでいない場合、骨折抑制効果はほとんどありません。逆に、しっかり継続している人ほど、骨粗鬆症による骨折で発生することが多い大腿骨近位部骨折(太ももの付け根の骨折)の発生率が低くなることが報告されています。
【治療は命を守ることにもつながる】
骨粗鬆症の治療は、骨折を防ぐだけでなく、生命予後(命の見通し)にも関係しています。
大腿骨近位部を骨折した方を対象にした研究では、骨折後に骨粗しょう症の治療を受けなかった人の死亡率は28%でした。一方で、治療を継続した人の死亡率は13.3%と、ほぼ半分まで低下していました(Lyles KW, N Engl J Med. 2007)。
つまり、骨粗鬆症の治療は「骨を守る」だけでなく、「命を守る」ことにもつながるのです。
【続ける方法はいろいろ】
骨粗鬆症の治療には、内服薬だけでなく、点滴や自己注射などさまざまな方法があります。自分に合った治療法を選び、無理なく続けることが、骨と命を守る第一歩。
「症状がないからこそ、続けることが大切」——このことを、ぜひ心に留めておいてください。